道外れの人生(改)

【思い出】
以前、私はパチ屋でコイン窃盗の被害に

遭ったことがある。

それは4号機初代巨人の星の島で

トイレに行っている間にドル箱を

持っていかれたのだ。
※現金にすると約3万円分。


てっきりこれだけだと思っていたが

過去の収支帳を読み返してみると

2000年某日の収支結果において

「コイン盗まれる」というメモを見つけた。

これを見た瞬間その時の映像が走馬灯のように

蘇ってきた。

今回はその時の話をしよう。


・・・2000年某日。

私が住む家から数キロ離れたところに

当時としては比較的珍しいパチスロ専門店が

オープンした。

その店にはパチスロ専門店だけあって

大花火の5連バージョンを筆頭に

櫻、ヒートウェバー、ニューパル、

マジカルニンジャジライヤなどの

珍しい裏モノもあって、ある時

ジャイアンが新台で導入されたのだ。


この機種は当時、最初から裏モノとして

雑誌で比較的大きめに取り上げられた

こともあり、かなり中身は過激な仕様で

良い台なら2万枚も射程圏内だったのだが

見た目やゲーム性がイマイチなせいも

あってか人気は今一つだった。


ちなみに5号機ではニューアークという

超マイナーメーカーから同じ機種名の

『ジャイアン』が登場しているが

本機とは一切関係ない。


©ニューアーク


そんな中、私にジャイアンを打つ機会が

訪れたのは、新台導入から

数日経った頃だと思う。

既に客は飛び飛びで、ガラガラだった。

たしかスーパースターダストとアステカの

設定狙いをミスり、遊び打ちで

打ってみることにしたわけだ。


で、この店には非常に癖の強い

裏モノの常連が居て、その中に

病的ブランド貧弱女というあだ名の女が居た。
※パチ屋に居るガリガリの女のことを
当時はそう呼んでいた。


歳はおそらく20代後半で、目は虚ろ。

いつもヴィトンのカバンを肩に掛けながら

ツインサーファーばかり打っていたのだが

当然見るからに負け込んでいる。

おそらくあの顔は借金もしていたのだろう。


で、この貧弱女はジャイアンにも目を付けたようで

私がこの機種で遊んでいる時に、彼女が

隣に着席した。

何せ目が虚ろな病的貧弱女の隣では

打ちたくなかったので、すぐに

ヤメて帰ろうかとも思ったのだが

そういう時に限って当たる。


私はビッグとレギュラーを織り交ぜての

連チャンであっという間に3000枚ほど獲得し

そこそこのプラスになったところで

一旦トイレに行くことにした。


で、スッキリして飲み物を買ってから

台に戻ると、頭上に2つあったはずの

ドル箱が無い。

同時に隣の貧弱女も消えている。


この店、それ以前にも2万枚のコインを盗まれた

という噂が出ており、それについては

未だに捕まっていなかったのだ。
※これはあとから知った話だが
どうやら客が落とした2万枚超えの
レシートだったらしい。


私はやられたと思い、すぐに店員を呼んで

事情を説明する。


「あーちょっと今カメラを確認しますんで」


そうして店員は事務所に入っていったが

いくら待っても戻ってこない。


しばらくして戻ってくるなり


「写ってないですね」


その後、他の某店で言われたことと

同じことを言われたことがあるが

写っていないわけがない。

おそらくもし写っていると言えば

警察を呼ばれて面倒になるからと

店長かなんかに言われたのだろう。


私はその時かなり腹が立っていたので

今から警察を呼んで一緒にもう一回

カメラを確認するから店長を呼べと伝える。


すると、奥から小走りで店長が来るなり

私にこう耳打ちする。


（警察を呼ばない代わりにイベント台を
権利を差し上げますのでそれで
いいですかね？）


裏だらけの店に警察をよほど呼んで

ほしくないのか、なんとタダで設定6を

打てる権利をもらったのだ。

この店は来店ポイントを規定数貯めると

指定された機種の設定6を打てる権利が

得られるのだが、これがいきなり

朝一から打っていいとのこと。


指定された機種はタイムクロスだったのだが

盗まれた6万円分のコインよりもスペック的には

一応価値があったし、私も面倒になっていたので

それで手を打つことにした。
※結果は+約8万勝ち。
2000年パチスロ！山佐初の4号機の液晶搭載機『タイムクロスA』


©山佐


ちなみにその後、貧弱女の姿を一切

見なくなり、この店は5号機の登場を待つ前に

閉店してしまった。

結局犯人は誰なのか不明だったが、

おそらく彼女で間違いないだろう。


私のコインを盗んだ犯人と

2万枚のレシートを盗んだ人物と

貧弱女は果たして同一人物なのかは

結局断定はできなかったが、その数年後の

某店のオープンイベントで彼女を見つける。

全く変わらない貧弱な体付き、虚ろな目と

薄汚れたヴィトンのバッグを肩に掛けて

ホールをウロウロする姿を見て

私はこう思った。

彼女を許そうと。