道外れの人生(改)

【思い出】
この頃は既にパチスロが全く面白く

なくなってしまい、私のモチベーションは

下がる一方だった。


なので遠出することや大人数のテコを

使うこともなく、ハイエナメインで

喰っていた。


ただやる気こそなかったものの

テコを使って宵い越しとハイエナで

楽に勝てたため、パチスロを

ヤメるにヤメられなかった。


基本的にはこうしたハイエナメインで

動いていたが、カイジは朝一の特典と

設定6の分かりやすさもあって

設定狙いもしていた機種だ。


立ち回りを簡単に説明すると

朝一で300付近まで打って

当たらなかったらヤメ。

当たった場合はどのゲーム数で

当たったかをチェックし、6の振り分けが

多い250付近だった場合は

とりあえず続行、という感じだ。

非常にわかりやすいカイジの6は

安定こそするものの、エクストラ設定

というわけでもなく、ツモっても

不発で終わることはよくあった。


この時期は、いつも攻略グループに居た

知り合いがテコでよく二人で

行動していたのだが

彼がゴトの世界に行ってからは

ピンで打っていた。


で、カイジが新台で導入されて

数か月が経った頃、スロ仲間だった

別の男から仕事をヤメたから

一緒に打ちに行こうと連絡が来た。

彼は爆裂AT機の時代に結婚して

パチプロをヤメたのだが

会社の給料は安く、スロの方が

断然勝てると思い、再びプロに

戻ることを決断したと言う。


これから益々辛くなり、明日も分からない

5号機時代がやってくるというのに

彼は賢くない。

というよりも私と同じく馬鹿野郎である。


そういうわけで彼とも一か月くらい

一緒に連れスロしたり、飲みに

行ったりした。

時にはカイジの6で1万枚出したりと

驚異的な引きを魅せた彼だったが

数か月経って、収支を聞くと負け続きで

もうすぐ貯金が底をつくという。


©福本伸行/講談社


さらにそのことで奥さんと喧嘩になり

夫婦仲は最悪。

昔とは違い、目押しさえできれば

誰でも勝てる時代ではなくなり、このように

立ち回れない者は次々と淘汰されていった

時代。

設定1でも勝てた時代はもう終わったことを

彼は気付いていても、行動に移せなかった。

独自の波理論を展開し、今が今日一番の

上がり波のところだと言って、設定6を

途中でぶん投げたり、いわば高設定を

途中で捨てる行為が目立ったため

当然のように収支は伸びなかったのである。


結局彼とはしばらくして音信不通になり

パチ屋でも見かけなくなった。


・・・で、あれから15年。

久しぶりに彼が共通の知り合いと

飲んでいるとのことで行くことにした。

彼の見た目はあまり変わっていなかったが

私生活は当時からガラリと変わっていた。

あれからすぐに離婚し、借金を抱え

地方で工場の住み込みの仕事を5年続けて

地元に戻ってきたという。

5年間の節約生活で借金は全て返し

再婚。

地元に戻ってきてからは日雇い労働を

しながらも、プロ雀士になり

今はまたパチスロ生活を送っているようで

ハイエナや甘い機種でそれなりに

勝っているようだ。

昔とは違い、高設定をツモったら

閉店まで回すというプロとして

当たり前の動きもできるようになっていた。

今の私とは大違いである。


私とは少し違う地域で稼働しているため

店で会うことはないのだが

飲みに行った数週間後、連絡がきた。


「離婚して家を追い出されるので
金を貸してくれ」


と。


彼はダメなカイジである。