道外れの人生(改)

【95年以来のパチンコ屋】
私の家から車で数十分のところにある

郊外のパチンコ屋T。

ここは今から約25年前、兄貴に

パチンコ屋に行こうと言われ、初めて

パチスロを打った店である。
1995年パチスロ！パチンコ屋で初めてビッグボーナス（スリーセブン）を揃えた日。




基本的にはイベントもやっていないような

小さな店で、ボッタクリ営業だったため

その後、しばらく行くことはなかったが

4号機末期にはハイエナメインで

通うことになる。


そこで当時話題になっていた

パロット『花月伝説』がT店に一列導入される

ということで、新装2日目に

打ってみることにした。

というのもこの時T店では他に

ハイエナをやっていた髭面の知り合いMが

居たのだが、彼が花月伝説を打っているのを

見て、設定状況が甘いと言うので

打ってみたというわけ。




前述の通り、パチンコ玉を使った

パチスロであり、それ以外は特に

変わった様子もない。

打った率直な感想はつまらないの一言。

これならわざわざパチンコ玉ではなく

コインで打った方が楽である。

おそらく他のユーザーも皆そう思ったのだろう。

新装3日目くらいまではそれなりに客が

付いていたものの、その後は徐々に

客付きが悪くなり、1週間も経てば

島には誰も寄り付かなくなっていた。


一応高設定ならば勝負になる台だったが

それならばストック機の宵い越し狙いや

天井狙いをしていた方が十分日当を

稼げたわけである。


ただT店は5号機第一弾である本機を

気合いを入れて一列も導入したためか

客を付けたかったのだろう。

花月伝説には毎日設定56を使っており

しかも客層はほぼ年配客だったため

途中からでも簡単に高設定を打つことが

できた。


・・・だが、末期は私のような人間が

高設定を回すだけで低設定は放置。

そのため、数か月も経たないうちに

撤去されてしまう。

これが5号機の最初期の有様だったわけだ。


ちなみに花月伝説を勧めてきた知り合いNは

しばらくこの機種で喰っていたのだが

最初の月は花月オンリーで100万もの

収支を叩き出したようだ。

まだまだ4号機が設置している状況の中で

5号機も侮れないなと思った瞬間だ。


・・・ただ実際はそうでもなかった。

この頃は平均すると4号機全盛期に比べて

年間収支が半分近くまで減り、パチスロは

本格的な氷河期へ突入するのである。


・・・あれから15年。

T店は既に閉店してしまったが、髭面の

知り合いNと久しぶりに連絡が取れた。

無類のパチスロ好きだった彼は今

パチスロを辞め、10数年振りに髭を剃り

日雇い労働者をやっているそうだ。




花月伝説で100万勝った男が何故

こうなってしまったのか。

実はNは基本的に私に匹敵するほどの

ナマケモノであり、月に5日程度しか

稼働せず、さらに月の始めに20万勝てば

その月は稼働しないような男だった。


いくらパチンコ・パチスロで勝てる術を

身に着けていたとしても、今は

努力しなければ勝てない時代。

Nは私と同じ、楽して勝てるから始めた

パチスロで努力する気はない

という考えだったのである。


無論、技術介入機～爆裂機までの

激甘時代は努力に見合うだけのリターンが

あったため、私と同じように人並み以上に

パチスロに全精力を注いでいたわけだが

そのやる気も無くなってしまったのだろう。


Nは日雇いで得た日当を家賃とタバコ代に充て

それ以外は寝る生活であり、酒も女も

ヤメている。


パチスロ以外楽しみが無かったというNから

パチスロを打つ楽しみを奪ってしまった

5号機。

そしてそんな5号機と同じような時代（6号機）が

これからさらに続くと思うと、まだまだ

私とNの表情が晴れることはないのである。