道外れの人生(改)

■沖スロにハマったスロプロ
ハイシオは導入当初から裏モノになっていた店が多く

私は当時、本機を導入したA店でリセットモーニングを

取りに通っていた。
※リセットモーニングとは裏モノ特有の
モーニングで、朝一特定のゲーム数を消化すると
ボーナスに当選する。
もちろん連チャンもする。




A店は住宅街にあった古いパチンコ屋で

地元の常連客しか居ないよう昔ながらの店

といった感じだ。


私はそこで知り合ったスロプロのNと一時期

よく一緒に開店前から並び、リセットを刈っていた

記憶がある。

Nは裏モノ全盛期である3号機時代からパチスロを

始めたものの、裏モノはほとんど打たず

攻略法やゴトといったものには一切手を付けなかった

いわゆる正統派のプロだった。

ところが彼はハイシオに出会い、徐々に裏モノの魅力

華の魅力に取りつかれていったわけである。




これまで裏モノにハマって人生を狂わせたプロは

何人か知っているが、彼が最も破滅への道を

進んでいたのは間違いないだろう。


・・・とはいえ、彼はハイシオでは最初勝っていた。

ハイシオは裏モノではあったものの

リセットモーニングがあり、尚且つ設定も

他の裏モノのように何十段階もあるわけではなく

単純に6段階設定で、設定6に関しては

機械割が160％を超える爆裂設定。

なので朝はリセットを取って、それが終わると

初当たりが軽い台を打てば、それなりに

勝てる機種だったわけだ。


そんなわけで私とNはA店で連日連勝。

勝ちまくっていたのだが、雲行きが

怪しくなったのはハイシオの客が飛び

リセットが入らなくなってから。

私はハイシオにリセットが入らなくなると

ゴーゴージャグラー（裏モノ）のリセットや

大ハナビやコンテスト、ディスクアップなどの

普通のノーマルタイプやART機に逃げたのだが

Nに関してはそれでもハイシオを打ち続けた。

設定状況はどう見ても全台設定1なのに

毎日全ツッパである。


・・・そんな立ち回りであるため、彼は

とことん負け続けた。




それから約一か月。

A店に行けば必ず顔を合わせていたNだったが

ある時を境に急に店に来なくなった。

負け続けてネグラ替えしたのだろう。


・・・そう思っていたある日。

久しぶりにNとA店で遭遇。

話を聞くと彼は会社を始めたようで

それで忙しくて店に来れなかったという。
※どんな会社かは知らない。

そしてその日、私は彼と焼肉を喰いに行き

最近のA店や他店の状況を報告したり

Nの近況を聞いたりしていた。

で、会計は今持ち合わせがないということで

払ったのは私。

以来、A店でNを見掛けることは二度となかったし

連絡先も知らなかったので、彼がその後

どうなったのかは知らない。


・・・ただ、A店の他の常連の婆さんの話を聞くと

彼は実は結婚をしていたのだが、パチスロで

生活していることは隠していたという。
※子供は居るかは不明。

で、沖スロで負け続けて嫌になり、一念発起して

会社を起こしたはいいが、資金繰りに上手くいかず

借金を抱えて破産、そして離婚。

その後、彼はA店の近くにある実家に戻るも

追い出されてからは、車上生活を送っている

とのことだった。




大人しく地道にノーマルパチスロで稼いでいれば

良かったものを、裏モノに手を出し、そこから

無謀な賭けに出てしまい、転落していったN。


それにしてもスロプロであることを隠して

よく結婚できたなとは思うが、今考えると

彼はいつもワイシャツ姿だった。

家を出る時はスーツだったのだろうか。


・・・結局NはA店はおろか、他店でも

一切見掛けなくなり、途絶えた。

その後4号機末期の頃に、一度だけ某店で

イミソーレ（ノーマル）を叩いていたのを

見た記憶があるが、話すことはなかった。


パチスロを打てているということは

金に関しては何とかなったのか、それとも・・・


・・・スロプロは地味な人生を送っていれば

人並みには生きていけるだろう。

だが、背伸びをすればほとんどの人間は

失敗する。

所詮スロプロなどは誰にでもできるものだが

何の保障もないし、当然華やかな生活は送れない。

過去の私のように月に数十万稼いで満足しているならば

それでもいい。

ただそれが馬鹿げたことだと気付くのに私は

20年も掛かった。

パチンコ・パチスロは勝つものではない。

負けて当然なギャンブルであった方が良いのである。